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「仏作って魂入れず」ー千葉市の外国人受入体制

更新日:2021年10月19日

 当サイトの経歴・資格のページにあるとおり、私は2014年度から2020年度まで、千葉市日本語指導通級教室で講師を務めていた。この教室は一時期注目されて、マスコミの取材や他県・他市からの視察などがあった。マスコミ等の評判も概ね好評で、「千葉市は先進的な取組みをしている」という書き方をされた。

 しかし、私が7年間勤めた経験から言うと、千葉市の外国人児童生徒の受け入れ体制には「最も肝心なこと」が欠けている。それは、外国人の子どもが入ってきた時に、「診断と評価」が行われないことと、その子どもに対する長期的な「指導計画」を誰も立てないことである。

 外国人の子どもが千葉市に入ってくると、どのように受け入れられるか、実態から説明する。

 千葉市役所のウエブサイトの「転校・編入に伴う手続き」の「海外から千葉市に転入する場合」を見ると、次のように書いてある。「転入手続きの際、『転入届』とともに『児童・生徒編入学申請書』を提出していただくと、その場で『編入学通知書』が発行されます。指定された学校に『編入学通知書』を提出することで手続きは完了します(千葉市教育委員会に出向く必要はありません。)」(下線は筆者)

 これを簡単に言い換えると、「住民登録の手続きと一緒に学校の手続きをすればよい。あとは直接学校に行きなさい」ということである。

 これに対して、同じ県の船橋市のウエブサイトでは次のようになっている。「転校手続きの流れ」の中の「海外から転校してくる方」で「児童生徒が外国籍の場合」には、「面談を行いますので、日本に来る日が決まりましたら、学務課で面談の予約をしてください。(面談の予約は電話でも可)」と示されている。

 私は面談でどのようなことを聞くのかを電話で問い合わせたところ、「どのような支援が必要かなどを聞いて、本人と学校との調整を仲立ちするための面談だ」とのことだった。

 また、「外国人集住都市」のひとつである群馬県大泉町のウエブサイトでは次のようになっている。「外国人児童生徒の就学」のページで、「大泉町役場での手続き」には、「転入の手続きをした後、教育管理課で就学のための手続きをします」とあり、「学校での手続き」には、「指定された学校に親子で行き、学校生活について話し合います。就学に必要な書類、持ち物、費用などの説明を聞き、連絡先などを知らせます」となっている。

 以上ように、千葉市では就学前の事前調査や支援などは全く行われずに、子どもはいきなり「学校に放り込まれる」ことになる。船橋市や群馬県大泉町のように事前の適応推進指導・支援が行われるかどうかは、学校や学級担任次第である。千葉市の小中学校に広く悉皆調査をしたわけではないが、私が生徒や学校から得た情報では、いきなり「学校に放り込まれる」のが実態のようである。

 では、このような経緯で外国出身の子どもが編入してきたら、学校はどうするか。まず、市教委が雇用している外国人児童生徒指導協力員(いわゆるネイティブ)の派遣を申請するか、ボランティアの日本語指導者を探す。言語により異なるが、指導の頻度は1週間に1回か、2週間に1回程度のようだ。

 当然、両者とも教育の専門家ではないので、診断や評価はできない。しかも学校によっては、外国人指導協力員は数名の子どもを同時に指導しなければならない。学年や日本語の習熟度が異なる集団を指導するわけである。これでは、一人ひとりの子どもの知的発達程度やメンタルの状態を診断して、長期的な指導計画を立てることなどは不可能である。

 もちろん長期的な指導計画は、教員が立てるべきであるが、千葉市にそのような仕組みはない。2020年の10月に、学校の日本語指導担当者、外国人指導協力員、日本語教室の講師を対象にした研修会が「初めて」開かれたが、市教委から学校に指示されたことは、「特別の教育課程」なので、指導の記録を作りなさいということだった。診断・評価と長期的な指導計画については何の話もなかった。(余談だが、千葉市の受入体制について、勤め始めてからずっと他の講師と共に改善策等を指導課に具申してきたが、唯一実現したのがこの研修会であった。)

 このように長期的な視点がないまま、外国人の子どもの学校生活が始まる。学校は「日本語ができるようになれば、成績もそのうち上がるだろう」と考えて、外国人指導協力員に任せきりである。私が教えた生徒の中で、「取り出し授業」で指導協力員に指導されている時に、学校の先生が見に来た経験をもつ生徒はひとりもいなかった。

 この結果、子どもは中学3年まで「放っておかれる」。やがて、高校入試が迫ってきても成績が上がらないので、慌てて私が勤めていた教室に生徒を送ってくるという例が多かった。

 しかし、「抽象的操作期」と言われる時期に、母語でも日本語でも適切な教育を受けなかった子どもは、日常生活の日本語ができても成績はなかなか上がらない。年齢相応の知的発達がなされていなければ、成績が上がらないのは言語の問題だけではないからである。

 以上のように、千葉市は外国人指導協力員を雇っています、日本語指導通級教室を設置していますと言っても、受け入れ段階での「診断と評価」「長期的な指導計画」の仕組みがないので、まさに「仏作って魂入れず」の状態である。

 上述の「中学3年まで放っておかれた」生徒がどうなるかは、次回の記事で述べる。

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